「湯を沸かすほどの熱い愛」という映画を知っている人は多いんじゃないでしょうか。
2016年に公開された映画で、その年の日本アカデミー賞では6部門を受賞。
中野監督はこれが商業用長編映画のデビュー作と、話題に事欠かない映画でした。
1年以上前の映画ですけど、Amazonプライム・ビデオのラインナップにいつの間にか入っていたので鑑賞。
賛否両論ある映画ですが、僕個人は非常に楽しめた映画です。
多くの人に知ってもらいたいと思うので、今回レビューします。
未視聴の方を思い、ネタバレは記事後半だけにしておきます。
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目次
あらすじ
銭湯「 幸(さち) の湯」を営む幸野家。しかし、父が1年前にふらっと出奔し銭湯は休業状態。母・双葉は、持ち前の明るさと強さで、パートをしながら、娘を育てていた。
そんなある日、突然、「余命わずか」という宣告を受ける。その日から彼女は、「絶対にやっておくべきこと」を決め、実行していく。・家出した夫を連れ帰り、家業の銭湯を再開させる。
・気が優しすぎる娘を独り立ちさせる。
・娘をある人に合わせる。その母の行動は、家族からすべての秘密を取り払うことになり、彼らはぶつかり合いながらもより強い絆で結びついていく。そして家族は、究極の愛を込めて母を葬(おく)ることを決意する。引用:「湯を沸かすほどの熱い愛」
オフィシャルサイト http://atsui-ai.com/index.html
次々に起こるドラマチックなエピソード
あらすじにもありますが、主人公の母・双葉の周りには次々と問題が起こります。
炊事洗濯、家事育児をこなし、パートタイムで必死に家計を切り盛りしながら毎日を生きている。
また、娘が学校でいじめられている問題にも持ち前の肝っ玉で勇気付ける。
必死で生きている中追い討ちをかけるような余命宣告。
目を背けたくなるような問題が次々起こります。
「次のシーンでもっと悪いことが起こるんじゃないか。」と観ているこっちも常にハラハラしっぱなしです。
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伏線が多く無駄なシーンが無い
伏線と言うと安っぽいかな?
冒頭、次から次へと問題が起こる幸野家ですが、その中で違和感を感じる描写がいくつか出てきます。
あまりにも問題が起きるので、気づかない間に忘れてしまうほど。
物語が進む中でそれが活きるシーンがいくつか出てくるのですが、そのうちの一つでボロ泣きしました。
違和感を感じながらも、引っ張られることなく自然と物語に没入できる構成は素晴らしかったです。
「静」の描写の素晴らしさ
全編を通してあまり音楽が流れません。挿入歌は無く淡々と映画は進みます。
生活音と会話だけで世界観を表現するのは、邦画だと一般的なので、監督の邦画に対する愛なのかな?と感じます。
ノスタルジーを感じる木造の銭湯が舞台なのも一役買ってます。
かつては地元に愛された銭湯。
常連客で賑わっていたであろう光景も、もう誰もいない。
乾いた湯船のタイルや、蛇口の描写は、静かでありながら想像を掻き立てさせてくれます。
宇多田ヒカルが2年前ぐらいに出した”真夏の通り雨”のMVを思い出させてくれました。
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賛否両論のラストシーン
その衝撃のラストシーンに驚いた人は多いでしょう。
感動する人、拒絶する人、意味が分からなかった人もいたと思います。
僕は賛成派ですが、「完全肯定!文句なし!」ってほどは言えない。
どちらかと言うと「ちくしょう!やってくれたな!」という思いです。
エンドロールへと続く表現は、溜めに溜めたものを一気に爆発させて、見事に振り切りました。
その表現が奇抜だったので、この作品の話題性が高まったのもわかります。
まとめ:人を選ぶラストだが純粋に「泣ける映画」としての価値は高い
感想は人それぞれですが、人気である以上やはり万人ウケはしやすい作品です。
僕も観たきっかけは、知り合いに「泣ける映画」として紹介してもらったからですし。
家族の愛、母親の強さ、命の尊さをドラマチックに描いた名作だと僕は思います。
※リンクのあと、ネタバレです。
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※ここからネタバレありのレビュー
冒頭からずっと感じていた違和感の一つは「タイトル出てねぇじゃん。」「え?主題歌は?」だったんですが、
見事にラストシーンで回収してくれました。
最後はスローテンポながらも、まくしたてるような演出です。
「え?お母ちゃん燃えとる?」
「タイトルどーん!」
「ギターイントロどーん!」
んでもって「赤い煙ばーん!」
からの「エンドロールゥゥゥゥ」
が入るなんて誰が想像できますか。
このシーンに否定的な人が多いようですね。
死者への冒涜だとか、カニバリズムだとか、宗教的だとか。
僕もその意見は理解出来ないわけじゃないです。
双葉で湯を沸かし、ニコニコしながら風呂に入っている家族を観た時、
心臓を掴まれたような、えづきたくなるような暗い思いと、熱い家族の愛による感動が、ないまぜになりました。
それでも賛成派なのは、僕も身内が亡くなった時には最高の方法で弔いたいと思うからでしょうか。
特に双葉は常に「自分の事は二の次」な性格なので、そんな人が亡くなったら最高の弔い方をしたいだろうなと感じるのかもしれません。
また、「非常識だ!」と真っ向から否定するのも嫌いなので。
なので、幸野家の思考と世間一般の弔い方を天秤にかけた時、僕はたまたま賛成派に傾いただけです。
非常に楽しめる映画でした。